食品ロスとは?
「食品ロス」とは、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品のことです。
農林水産省では、「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」と定義しています。
日本国内では、2022年度に推計約472万トンの食品ロスが発生しています。
これは日本人一人あたり毎日おにぎり1個分(約124g)を捨てている計算になります。
食品ロスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「食品ロス」と「フードロス」の違いとは?意味や使い分けをわかりやすく解説
食品ロスはなぜ問題なのか?その深刻な3つの影響
食品ロスは、単なる「もったいない」を超えた、環境・経済・社会的に深刻な影響をもたらす課題です。
国連やFAO、UNEPなどの国際機関も、削減を世界的目標(SDGs 12.3)に掲げています。
1. 環境への影響
温室効果ガスの発生源として深刻
FAO(国連食糧農業機関)によると、世界全体で発生する食品ロス・廃棄に関連する温室効果ガス排出量は、年間約44億トンCO₂相当とされます。
これは、アメリカ・中国に次ぐ「世界第3位の排出源」に匹敵すると指摘されています。
水・土地・エネルギーの浪費
食品ロスによって無駄になる農業資源も深刻です。
たとえば、全世界で食品ロスにより無駄になっている水の量は、年間2,500億トン以上(=ナイル川の年間流量に匹敵)。
また、世界の農地の約30%が廃棄される食品の生産に使われているというデータもあります。
2. 経済への影響
日本だけで年間約2兆円以上の損失と推計
食品ロスによる直接的・間接的な経済損失は膨大です。
生産、輸送、加工、販売にかかるコストに加えて、廃棄処理費用も発生します。
農水省や民間研究機関の推計では、日本における食品ロス関連コストは年間で少なくとも2兆円規模とも言われています。
小売・飲食・家庭すべてに損失が発生
- 小売店:売れ残りによる在庫ロス
- 飲食店:食べ残し・仕込み過剰による廃棄
- 家庭:使いきれなかった食材、賞味期限切れ食品の廃棄
廃棄には費用がかかるため、それぞれの現場で経済的なダメージが蓄積しています。
3. 社会への影響
世界の8億人が飢餓に苦しむ中での大量廃棄
国連WFP(世界食糧計画)によれば、世界では約8億2,800万人が栄養不足や飢餓状態にあります。
その一方で、毎年13億トンもの食品が廃棄されているという現実は、倫理的な矛盾とも言えます。
社会支援の機会損失
本来活用できるはずだった食品が廃棄されることで、フードバンクや福祉団体への供給チャンスも失われています。
特にに、地域の子ども食堂や生活困窮者支援では、食品提供が重要なインフラになっています。
食品ロスを減らさないと起きてしまうこと
食品ロスの問題を放置し続けると、私たちの暮らしや地球に次のような深刻な影響が現れる可能性が考えられます。
1. 地球温暖化・気候変動の加速
廃棄された食品は焼却や埋立により処理されますが、その過程で温室効果ガス(CO₂やメタンなど)が大量に排出されます。
食品ロスが減らなければ、これらの排出量はさらに増え、気候変動の進行や異常気象のリスクが高まる恐れがあります。
2. 食料価格の上昇と供給不安
世界的に人口が増加する中、食料需要は年々高まっています。
にもかかわらず、大量の食品が無駄に廃棄され続ければ、供給の逼迫や価格の高騰を招き、家計や事業者への影響も深刻になります。
- 生産コストの上昇
- 原材料不足による価格不安定化
- フードセキュリティ(食料安全保障)へのリスク
3. 資源枯渇と生態系への負荷
食品生産には、水・土地・エネルギーなど多くの資源が使われています。
ロスを減らさなければ、それらの資源が無駄に使われ続け、限りある地球資源の枯渇を加速させることになります。
特に水資源や森林伐採の増加は、生態系への影響も大きく、生物多様性の損失にもつながります。
4. 飢餓や格差の拡大
現在、世界ではおよそ9人に1人が栄養不足といわれています(WFP推計)。
一方で、先進国では大量の食品が日常的に捨てられている現状があります。
食品ロスが減らなければ、食料の再配分の機会を逃し、飢餓・格差の拡大がいつまでも減らない可能性があります。
5. 廃棄処理コストの増大と税負担
廃棄物の増加は、自治体におけるごみ処理費用の増加にもつながります。
そのコストは最終的に税金として国民に跳ね返ってくるため、食品ロスが増えるほど社会的コストも増大します。
だからこそ、今が分岐点
食品ロスを「もったいない」で済ませず、「放置すれば未来にどんな影響があるのか?」を知ることが、行動の第一歩です。
未来の環境・食料・暮らしを守るために、いま私たちにできる小さな選択が、大きな変化につながります。
食品ロス削減に向けて私たちにできること
- 必要な分だけ購入する(買いすぎ防止)
- 食材の保存・使い切り方法を工夫する
- 賞味期限と消費期限の違いを正しく理解する
- 外食時は適量を注文し、残さず食べる意識を持つ
- 余った食品をフードシェアサービスや寄付に活用する
まとめ:食品ロスは「見えない負担」を私たちに与えている
食品ロスは、単なる家庭内のムダではなく、地球環境・経済・社会全体に大きな負担を与える深刻な問題です。
このまま食品ロスを放置すれば、気候変動・資源不足・社会的分断といったリスクがさらに深刻化していきます。
私たち一人ひとりの行動が、未来の資源と社会を守るカギになります。
「もったいない」から「行動する」へ。
いま、私たちにできることから始めましょう。