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フードロス
2025/7/24

食品ロスの今後の見通し|課題と未来への取り組みとは?

食品ロスの今後の見通し|課題と未来への取り組みとは?

目次

食品ロスが社会問題として注目される理由

日本では、まだ食べられるにもかかわらず廃棄される「食品ロス」が、年間522万トン(2022年度推計)も発生しています。

これは国民一人あたり、毎日おにぎり1個を無駄にしている計算です。

食品ロスは、環境・経済・倫理など多方面に影響を及ぼしており、今後の対応が注目されています。

現状と課題:なぜ食品ロスは減らないのか

家庭と事業系での発生割合

2022年時点の推計では、食品ロスは家庭系247万トン、事業系275万トン。
企業だけでなく、一般家庭からもほぼ同じ量の廃棄が発生していることがわかります。

課題1:流通構造・過剰在庫

小売・外食業界では、納品期限・返品条件など流通ルールの厳しさが廃棄を増やす要因に。

消費される量に対して「多めに作る・仕入れる」商習慣も、改善の壁となっています。

課題2:消費者意識のギャップ

消費期限と賞味期限の違いを理解していなかったり、少しの傷や変色で廃棄するケースも多く、消費者の行動が食品ロスに直結しています。

食品ロス削減に向けた国の取り組み

  • 食品ロス削減推進法(2019年施行)
  • 「てまえどり」推奨・値引き販売の普及
  • 学校教育や地域イベントによる啓発活動

官民連携による制度整備と意識向上が進みつつあります。

食品ロスの今後の見通し

1. 政策目標:2030年までに半減へ

日本政府は、2000年度比で食品ロスを50%削減するという明確な目標を掲げています。

この目標に向け、2025年には家庭・事業者双方に対する施策の見直しが予定されています。

2022年時点の総廃棄量は約4.72百万トンで、事業系は目標以上に削減が進んでいる一方、家庭部門の削減が今後の大きな課題とされています。

行政や企業による啓発とともに、個人の行動変容も期待されています。

2. テクノロジーによる効率化が進む

今後の食品ロス削減においては、AIやIoTなどのテクノロジーの活用が不可欠です。

在庫管理や需要予測の精度を高めることで、廃棄リスクを抑える動きが加速しています。

たとえば、リアルタイムで売れ行きを分析し、最適な仕入れ量を自動調整する小売店も登場。

AIによる賞味期限管理や、食品ロス予測モデルなどの実用化も進んでおり、テクノロジーが「もったいない」を未然に防ぐツールとして進化しています。

  • 食品廃棄物リユース関連市場

    2023年に約14億USD → 2033年には31億USD規模へ(年平均成長率 約8%)

  • AI・IoTを活用したロス削減ソリューション市場

    2024年に15億USD → 2033年には約39億USDへ(CAGR約10.8%)

今後10年で、食品ロス対策は「社会課題」から「成長産業」へと進化していくと予測されます。

3. フードシェアリングやリユースの一般化

食べられるのに捨てられていた食品を「必要な人に届ける」仕組みが、社会のインフラとして整備されつつあります。

代表的な例が「フードシェアリングサービス」で、コンビニ・飲食店・食品メーカーなどが余剰商品を登録し、消費者や福祉団体に届ける取り組みが広がっています。

また、企業の在庫ロスを最小化する「リユース食品流通」の仕組みも成長中。

フードロスを「社会資源」として捉える視点が、今後さらに普及していくと見られています。

4. 気候変動と食品需給への影響

地球温暖化によって、トウモロコシ・小麦・大豆といった主要作物の収量は減少傾向にあります。

気温が1℃上がると、国民1人あたり120kcal相当の栄養不足が生じるというシミュレーションもあるなど、将来的な食料供給の不安定化が懸念されています。

こうした中、食品ロスの削減は「余剰を減らす」だけでなく、限りある食資源をいかに有効に使い回すかという観点からも、気候変動対策と深く関わるようになってきています。

5. ESG・SDGs経営の本格化

上場企業を中心に、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への対応が経営戦略の一環となっています。

食品ロス削減は、企業にとっても「サステナブルなブランド価値」や「リスク管理」に直結するため、IR資料やCSRレポートでの開示も一般化しつつあります。

特に製造・流通・外食産業では、ロス削減=利益率改善やイメージアップにつながるという認識が広まり、今後もESG指標のひとつとして注目され続ける見込みです。

6. 国際連携・制度の高度化

国連のSDGs目標12.3では「2030年までに小売・消費段階のフードロスを半減」と明記されており、日本もOECDやG20と連携した政策協調を進めています。

具体的には、ロス量のモニタリング精度の向上、報告体制の整備、自治体主導のローカル施策の強化などが挙げられます。

今後の食品ロス削減は、国際的な制度調和の中で日本独自の施策を進化させながら、より高度な測定・管理フェーズへと移行していく見通しです。

まとめ

食品ロスを取り巻く状況は、政策・技術・社会意識・国際連携など多くの側面から変化しています。
今後は、個人の努力だけでなく、制度・産業・社会全体の協調による本格的な変革フェーズに入っていくと見られています。

私たち一人ひとりが、買いすぎない、食べきる、シェアするなどの行動を心がけることで、未来に向けた変化の一端を担うことができます。
持続可能な社会を目指し、今できる一歩から一緒に取り組んでいきましょう。


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